【農地法第4条・5条】農地転用の手続きと許可申請のポイント
- ブルーシーン行政書士事務所 矢野 雅哉
- 9月7日
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更新日:14 時間前
農地法第4条・5条許可申請のポイントと手続き
こちらの記事では、農地の貸し借りや売買といった「権利移動」の手続きにおける行政書士のサポートについて解説しました。今回は、農地を農地以外の目的、例えば「住宅」や「駐車場」「資材置場」として利用する場合に必要な「農地転用」という手続きに焦点を当てて、行政書士がどのようにサポートできるかをご説明します。
農地転用とは?
農地法において、「農地」とは耕作の目的に供される土地を指します。この農地を、農地以外の土地、例えば宅地、雑種地、道路、あるいは今回焦点を当てる住宅や駐車場等に変更することを「農地転用」といいます。
農地は、日本の食料生産の基盤であり、貴重な資源です。そのため、無秩序な転用を防ぎ、優良な農地を確保するという目的のもと、農地法によって厳しく規制されています。農地転用を行うには、原則として都道府県知事等(または権限移譲された市町村長)の許可が必要です。
• 農地法第4条許可: 農地の所有者自身が、農地以外の用途に変更する場合に必要です。
• 農地法第5条許可: 農地を転用することを目的として、売買したり貸し借りしたりする場合に必要です。例えば、農地を買って宅地にする、農地を借りて駐車場にする、といったケースが該当します。
農地転用に向けた手続きとは?
農地転用の許可を得るためには、農地法に定められた厳しい許可基準を満たす必要があります。特に、住宅や駐車場は農業生産に直接関わる施設ではないため、農業用施設への転用等と比較すると、許可を得るのが難しいケースが多くあります。
主な難しさは以下の点にあります。
1. 厳しい立地基準:
◦ 農地はその優良性や集団性によって区分(甲種農地、第1種農地、第2種農地、第3種農地など)されており、原則として、営農条件が良い農地(甲種農地、第1種農地)や、まとまった農地がある場合(農用地区域内農地)は、農業上の利用に支障がない場合を除き、原則として転用が許可されません。
◦ 特に農用地区域内の農地は、農業振興地域の整備に関する法律に基づき農業的利用を確保すべき土地とされており、原則として転用は認められません。まずは農用地区域からの除外手続き(農振除外)が必要となりますが、これも厳しい要件があります。
◦また、地域農業のおおむね10年後の将来のあり方(担い手への農地の集積・集約化の方針、農地中間管理機構の活用方法など)について、農業者や地域の皆さんの話し合いにより、考えをまとめて策定された「地域計画」が令和7年4月からスタートし、「農業振興地域の農用地区域からの除外手続き(農振除外)」や「農地転用」をする際の要件に、『地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないと認められること』が追加されました。そのため、地域計画内の農地の農振除外や農地転用には、あらかじめ地域計画を変更する手続きが必要となり、申請手続きに向けてのスケジュールが1~2か月程度後ろ倒しになる可能性があります。
◦ 住宅や駐車場への転用は、主に市街地の区域内や、市街化の傾向が著しい区域にある農地(第3種農地等)であれば原則許可が得られることになります。
2. 事業実施の確実性:
◦ 申請された転用事業(住宅建築や駐車場整備)が、資金計画や他の法令に基づく許認可の見込みから見て、確実に実行される計画であるかどうかが厳しく審査されます。
◦ 自己資金の証明や、融資証明書、補助金・交付金の内示書や予算書などが必要になります。
◦ また、宅地造成のみを目的とする転用は原則不許可です。
3. 周辺農地への影響:
◦ 転用によって、周辺の農地の営農条件(日照、通風、用排水、農道等農地の保全又は利用上必要な施設の有する機能)に支障を及ぼしたり、農地の集団化を妨げたりしないかといった点も重要な審査項目です。これらの影響を防ぐための計画(用排水計画など)が必要となります。
4. 多数の添付書類:
◦ 申請には、土地の状況や事業計画、申請者の能力を証明するための様々な書類が必要となります。公図、位置図、現況図、登記簿謄本といった土地に関する書類に加え、事業計画書、土地利用計画図、転用候補地の選定理由書、さらにはその他法令上の許認可や関係機関との協議等が証明できる書類、水利権者等の同意書や、工事用資材置場等の一時転用の場合には、農地への原状復旧の計画が確認できる工程表等、多岐にわたります。
◦ これらの書類は申請内容の真実性や、許可基準を満たすかを判断するために不可欠です。
行政書士がサポートできること
農地転用、特に住宅や駐車場といった個人的な利用や不動産開発を目的とした転用は、初期段階の農地の種別や、関係法令等、許可基準を満たすかの調査のハードルが高く、手続きも複雑です。農地法関連業務専門の行政書士は、これらの手続きに関する専門知識を持ち、依頼者の代理人として農業委員会や関係各所との打ち合わせ、申請書類の作成・提出代理を行うことができます。
具体的に行政書士が提供できるサポートは以下の通りです。
1. 農地法第4条・第5条許可申請の代理:
◦ 農地を住宅や駐車場として転用するために必要となる許可申請手続きを一括して代行します。
◦ 申請地が許可基準(特に立地基準や一般基準)を満たすかどうかの確認を行い、許可の見込みについてアドバイスします。
◦ 農業委員会への申請書提出から、都道府県知事等による許可指令書の受理までの手続きを代行します。
3. 農業委員会等との事前調整・相談:
◦ 申請前に農業委員会等との事前相談や調整を行い、計画が許可基準に適合するか、必要な書類は何かなどを事前に確認することで、手続きをスムーズに進めることができます。
2. 関連するその他の手続きのサポート:
◦必要に応じて、「農業振興地域の農用地区域からの除外手続き(農振除外)」や「地域計画の変更申出手続き(地域計画除外)」等の関連手続き、農地転用許可後の工事進捗及び完了報告書の作成・提出についてもサポートいたします。◦ 農地転用に伴う地目変更登記など、関連する登記手続きに関しては、提携している土地家屋調査士、司法書士等の専門家をご紹介いたします。
行政書士に依頼するメリット
農地の転用手続きは、専門的な知識と多くの時間、労力を要します。行政書士に依頼することで、以下のようなメリットを享受できます。
• 複雑な手続きからの解放: 申請書類の作成、添付書類の収集、行政とのやり取りなど、煩雑な手続きを専門家が代行するため、依頼者の負担が大幅に軽減されます。
• 許可取得の可能性向上: 農地法の許可基準を正確に理解した専門家が、基準を満たすよう計画や書類を整備するため、許可を得られる可能性が高まります。
• 手続きの円滑化・迅速化: 経験豊富な行政書士が手続きを進めることで、不備による遅延を防ぎ、スムーズかつ迅速な手続きが期待できます。
• 専門的なアドバイス: 個別の状況に応じた最適な手続き方法や、転用に関する法的なリスク、注意点について専門的なアドバイスを受けることができます。
福島県いわき市/双葉郡の農地について、相続した農地の活用、あるいは事業展開のために農地の転用をご検討されている方、不動産会社、ハウスメーカー、建設会社の皆様等、是非ご相談ください。