農地法第3条とは?農地の売買・貸し借りに必要な許可申請ガイド
- ブルーシーン行政書士事務所 矢野 雅哉
- 8月15日
- 読了時間: 6分
更新日:16 時間前
農地法第3条許可申請のポイントと手続き
農地の売買や貸し借り等をする際には、通常の不動産取引とは異なる特別なルールがあり、「農地法」にもとづき、農業委員会の許可を受ける必要があります。
本記事では、農地の権利移動の許可制度である「農地法第3条許可」の概要から、許可の基準、必要書類、そして手続きの専門家である行政書士がどのようにサポートできるのかを分かりやすく解説します。
農地法第3条許可とは?
農地法第3条許可は、農地または採草放牧地を、耕作または養畜の事業のために、所有権、地上権、永小作権、使用貸借権、賃借権などの権利を取得する場合に必要とされる許可です。
この許可制度の目的は、単に土地の権利移動を規制することだけでなく、「農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地または採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保」に支障が生じることを防ぎ、適正な農地利用を促進することにあります。
個人の農家の方が農地を取得する場合だけでなく、農業法人を設立して農地を取得する場合にもこの許可が必要となります。
許可の主な基準
・全部効率利用要件
申請者(またはその世帯員等)が、取得後において、その事業に供する全ての農地および採草放牧地を効率的に利用して耕作または養畜の事業を行うと認められることが必要です。
具体的には、周辺の類似する農地の生産性と比較し、機械の保有状況、労働力(雇用や将来確保する労働力も含む)、技術(外部委託先の技術も考慮)といった要素を総合的に判断されます。
申請者の住所地から農地までの距離等のみで画一的に判断されることはありません。
資産保有や投機目的での取得、または自家消費目的であっても農地の一部のみを耕作する場合、あるいは周辺農地より著しく生産性が劣ると見込まれる場合は、許可されない可能性があります。
・農作業常時従事要件(個人の場合)
農地所有適格法人以外の申請者の場合、申請者またはその世帯員等が、取得後に行う事業に必要な農作業に常時従事すると認められることが求められます。
法人の場合は、その法人の業務執行役員等のうち一人以上が、その法人の行う耕作または養畜の事業に常時従事することが要件となります。
・地域との調和要件
申請者の事業内容や農地の位置・規模から見て、農地の集団化、農作業の効率化その他周辺地域の農業利用に支障を生ずるおそれがないことが必要です。
地域の農業における他の農業者との適切な役割分担が図られることも考慮されます。
「農地所有適格法人」とは?
法人が農地を取得する場合、原則として「農地所有適格法人」であることが求められます。農地所有適格法人とは、以下の要件を全て満たす法人を指します。
法人の主たる事業が農業であること
これは、直近3事業年度(新規法人の場合は今後の販売計画)において、農業に係る売上高が法人全体の売上高の過半を占めることで判断されます。
農業には、農畜産物を原料とした製造・加工、貯蔵・運搬・販売、農畜産物から変換した電気や熱の供給、農業資材の製造、農作業受託、観光農園や市民農園等の農村滞在型余暇活動(宿泊施設運営を含む)といった関連事業も含まれます。
議決権要件
株式会社の場合、特定の株主(農地の権利提供者、その法人の常時従事者、農作業を委託している個人等)の有する議決権の合計が、総株主の議決権の過半を占めること。
持分会社の場合、特定の社員の数が社員総数の過半を占めること。
許可申請の手続きと主な必要書類
農地法第3条の許可申請は、一般的に以下の流れで進められます。
申請書の提出先: 許可を受けようとする農地の所在地を管轄する農業委員会に提出します。
申請書の記載事項: 農林水産省令で定められた多くの事項を記載する必要があります。
土地の所在、地番、地目(登記簿と現況)、面積、所有者氏名または名称
申請に係る土地に設定されている所有権以外の権利の種類、内容、権利者の氏名または名称
権利を設定・移転する契約の内容
申請者またはその世帯員等についての詳細情報(現況利用状況、農業機械の保有状況、農作業従事者の数と配置、農業関係法令の遵守状況)
法人申請の場合は、現在の事業種類・売上高、取得後の事業計画、構成員(株主)の情報と議決権、役員(理事等)の情報と農業への従事計画等
権利取得後の耕作または養畜の事業が、周辺の農地利用に及ぼす影響の見込み
営農型太陽光発電設備を設置する場合は、さらに以下のような書類が必要です。
農作物の栽培時期、生産量、販売量、資金計画などを記載した営農に関する計画書
下部の農地における営農への影響の見込み(専門家(知見を有する者)の意見を含む)
撤去費用を設置者が負担することを証する書面
毎年提出する栽培実績書及び収支報告書
許可が不要なケース
一部のケースでは、農地法第3条の許可が不要とされています。これには以下のような例があります。
国または地方公共団体による土地収用。
相続、遺産分割、法人の合併・分割、時効取得等による権利取得。
農地中間管理機構が農地中間管理事業として権利を取得する場合
これらの特例に該当するかどうかの判断も専門知識が必要となり、届出が必要な場合があります。
行政書士ができること
農地法第3条許可申請は、多岐にわたる複雑な法令知識と実務経験を要する手続きです。行政書士は、その専門知識を活かし、皆様の農地取得を円滑に進めるための強力なパートナーとなります。
申請書類の作成代行: 個別の状況に応じた正確な許可申請書や添付書類(営農計画書、収支計画書、農地所有適格法人の定款等)の作成をサポートします。
法令調査と要件確認: 複雑な許可基準や農地所有適格法人の詳細な要件について、お客様の状況に合わせて具体的に確認し、適切なサポートをします。
行政機関との調整・交渉: 農業委員会や都道府県知事等の担当部局との事前相談や照会対応などを代行し、手続きを円滑に進めます。
事業計画策定支援: 許可基準を満たすための具体的な営農計画や事業計画の策定に関して、実務的な視点からアドバイスを行い、実現可能性の高い計画作りを支援します。
進捗管理とアフターフォロー: 申請後の進捗状況の管理や、許可後に必要となる各種報告義務(例:農地所有適格法人の毎事業年度報告)についてもアドバイスを提供し、継続的なサポートを行います。
農地は、食料生産の基盤であり、地域にとって貴重な資源です。その適正な利用を確保するためには、農地法の複雑なルールを遵守することが不可欠です。
福島県いわき市や双葉郡で農地法第3条許可申請をご検討中の方は、地域の事情を理解した行政書士にご相談ください